再生エネルギー研究グループ

OFFSHORE RENEWABLE ENERGY RESEARCH GROUP

再生エネルギー研究グループでは、今後主力電源としての導入が期待される浮体式洋上風力の安全性評価に関する研究や、波力発電、潮流・海流発電等の次世代技術の研究を実施しています。






研究紹介

1. 浮体式風車の平面運動を利用した係留索の異常検知手法の開発

将来の主力電源として期待される洋上風力発電の中でも、特に日本近海の深い海域での導入が可能な「浮体式洋上風力」に注目が集まっており、大規模な展開が検討されています。洋上風力発電を主要な電源として使用するためには、数十基以上の風車を設置し、運用していく必要があります。浮体式の施設は、チェーンやロープで構成された「係留系」によって位置を保っています。この内1本が破断してもすぐに漂流しないよう、安全性を確保した設計がされていますが、長期間放置しないよう異常を早期に検知する仕組みが欠かせません。一方で、水中に展開されるチェーンやロープを直接点検することは、水深が深くなるほど、また設置基数が多くなるほどコストが増加するため、安全かつ実用的な点検手法の開発が課題となっています。
当研究グループでは、水槽試験や数値解析を通じて、DGPS(Differential GPS)で取得した浮体の水平運動データを利用し、係留系の異常を検知するための実用的な手法を開発しています。

浮体式風力発電施設の水槽試験

浮体式風力発電施設の水槽試験




2. 波力発電装置の制御法の開発

海洋再生可能エネルギーの中でも、波エネルギーは地域偏在性が少なく、離島などの分散型エネルギーニーズを持つ地域に適した代替電源として期待されています。しかし、波力発電技術は他の海洋再生可能エネルギーと比べて未成熟であり、安全性の確保、エネルギー吸収効率の向上、コスト削減といった複数の課題があります。また、その一つとして、大きな波高条件下での運転が難しいことが挙げられます。波が高い条件で効果的な発電を実現するためには、装置の安全性を確保するために追加の機器が必要となり、発電コストが上昇します。そのため、物理的制約を満たしながら発電量を最大化できる高度な制御法の開発が不可欠です。
当研究グループでは、波力発電装置の実現に向けて、有効な制御法の開発を行っています。以下の図のように、運転可能条件を加味すると、従来の制御では発電量が大きく低下してしまいますが、開発した制御を用いることで、運転可能条件が多くなることで発電量を維持できるようになります。そのほかには、数値シミュレーションおよび水槽実験を用いた、制御適用下の波力発電装置の発電性能評価および安全性評価の技術開発を行っています。

可動範囲の物理的制約の考慮の有無による発電量の差

可動範囲の物理的制約の考慮の有無による発電量の差




3. 合成繊維索係留に関する研究開発

浮体施設はチェーンや合成繊維索を用いて位置保持されています。合成繊維索はチェーンよりも軽量であり、浮体建造コスト・設置コストの削減が期待されています。また、係留形式によっては海域占有面積を小さくすることが可能です。ただし、比較的新しい素材であり、また材料によって大きく特性が異なるため、安全性評価手法の構築が必要になっています。
当研究グループでは、数値計算や水槽試験により係留系仕様の安全性を検証しています。また、検討の初期の段階で評価を行うため、多様なタイプに適応した、合成繊維索係留の初期設計プログラムを開発しています。さらに、実用に際し不明な点が残る生物付着による影響についても、実海域浸漬試験を行いその影響を評価しています。

ポリエステル索を用いた初期設計プログラムの出力例

ポリエステル索を用いた初期設計プログラムの出力例




4. 人材育成に関する取り組み

日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム主催の大学生向けセミナーの開催を担当し、水槽試験を通じて浮体式洋上風力に関する知識習得プログラムを提供しています。また、このイベントでは小学生を対象とした見学会も実施しています。




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