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5月25日(木)のイベント初日の午後3時40分~4時40分の1時間にわたり、主催者提供の「特別セミナー」枠で、特別研究主幹の平田宏一と構造・産業システム系の産業システム研究グループ長の松尾宏平が講演を行いました。
冒頭で登壇した平田宏一特別研究主幹は「未来の内航船~デジタル技術・自動化技術・省エネ技術とカーボンニュートラル~」と題した講演を行いました。
平田特別研究主幹の講演では、まず海技研が開発に取り組む自動運航システムについて実験船「神峰」(17総トン)を用いた試験を紹介。2023年3月に離桟から自動避航、自動着桟のシームレス化を目指したフル自動運航や遠隔操船システムの試験を行い、一部手動で回避することがあったものの、おおむね適切な避航操船ができたと評価しました。
そして内航ミライ研究会と共同で進めているさまざまな研究について紹介し、499総トン型模型貨物船を用いたジョイスティック操船システムやスラスター・ウインチ協調制御、遠隔操船システムなどの開発の最新の進捗についても説明。同研究に関連し、自動運航システムの不具合時にも、陸上からサポートでき、GHG(温室効果ガス)の削減を図る省エネ船に必要な最適運航へとつながる陸上サポートシステムの開発を進めている点について示唆しました。また、「デジタル技術の利活用により、船員の労務負荷低減、CO2(二酸化炭素)削減、安全性の確保を全て両立できるようなサポートシステムを、現在検討し開発を進めている」と研究の進捗について紹介しました。
続いて松尾宏平グループ長が、造船所における船舶の短納期建造等の実現に向けた「すべてが数値表現され、すべてが数値計画され、すべてが計画通りに完結する造船所」を目指すための「デジタルシップヤード」に向けた取り組みについて解説しました。
これは造船所内で、実績データが使いにくいために、新船の建造コストが悪化しやすく、品質管理等の問題による工程の乱れが発生している現状を踏まえ、これらを数値化および可視化することで解決策を見出すものです。
「造船業は主作業率が40%弱で、いわゆる段取り作業や準備作業に相当する作業率が50%超という特徴がある。そのため造船現場で作業に携わる従事者の効率等を再現できる精緻なシミュレーションを実現するための、バーチャル工場を開発した」(松尾)
また、松尾グループ長は、建造デジタルツインを実現する狙いについても言及しました。「作業開始前に現場の状況を完全に再現することで段取りを徹底させ、作業モニタリングとの比較で違いを発見することで改善につなげられるメリットがあります。これにより1番船から最大習熟効果を実現し、造船所の競争力強化へとつなげていきます。」と造船現場における建造時の作業効率向上に向けたデジタルツイン導入の将来像について示唆しました。
セミナー資料については
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今年も上記3日間にわたり、テクスポート今治のAゾーン1階にて、自動運航船、DX関連の映像、洋上風力発電関連の映像のブース展示を行いました(展示ブースは、一般社団法人日本中小型造船工業会殿との共同出展です)。また、研究成果の紹介資料等の配布も行いました。最終日27日(土)には、業界関係者のみならず、一般の地域住民の方も数多くブースを訪問され、賑わいを見せました。
バリシップ2023全体の開催状況については
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