氷海用船舶

    アジアと欧州を結ぶ航路として実用化が期待されている北極海航路について、商業利用の促進を目的に、 船舶の氷中航行性能推定法の開発・北極海航路沿いの氷況データの構築を行い、氷海中を航行する状態での速力、燃費性能の評価を行っています。



北極海航路(Northern Sea Route; 北東航路)は、ロシアの北側を通ってアジアと欧州を結ぶ最短航路です。 色(青〜赤)のついている部分は2013年9月の氷分布で、赤い方が氷が多く存在していることを示しています。 氷が少なくなる夏の間、氷海用に造られた船(氷海用船舶)がこの短い航路を通航しています。 図中に引かれたラインは、図の氷分布を仮定した場合に最も理想的な航路を想定したものです。



氷海用船舶は氷を割ったり押しのけたりして進むので、大きな主機(エンジン)出力を必要とします。 また、氷がぶつかっても壊れないような船体構造も必要です。 そのため、氷海用船舶は通常、アイスクラスルールという規則を満足するように設計・建造されます。 例えば、アイスクラスルールでは、氷海用船舶が搭載しなければならない最低出力の計算式が定められています。


氷中抵抗増加モデルと主機作動を考慮して、ばら積み貨物船(船長217m)の船速・回転数・燃料消費量の変化を推定しました。 図の横軸は氷の密接度Cで、0~10で密接度合い(0は氷無し、10は完全密接)を示し、hは氷厚(m)を表します。



主機回転数Neの変化です。 氷の密接度Cが高くなると主機のトルクリミットにより回転数が上げられないことが分かります。




船速V(左)と1海里あたり燃料消費量FPM(右)の変化です。 氷の密接度Cが5(50%)以上では性能低下が著しいことが分かります。


スエズ経由と北極海航路との航海日数、燃料消費量の比較をしました。



与えた条件下(2013年9月の氷分布、アイスクラス1A相当、等)においては、スエズ経由に比べ大幅に日数、燃料消費量が削減される可能性があることが分かります。

※ ただし、これらのデータは簡易的な条件設定に基づいています。 条件によって大きく変動するため、常に大幅な削減になるとは限りません。


発表文献
  1. 宇都 正太郎, 瀧本 忠教, 松沢 孝俊:北極海航路運航シミュレータの開発-船舶の流氷中抵抗増加モデルの検証-, 日本船舶海洋工学会講演会論文集, 第17号, pp.303-306, 2013.
  2. Uto, S., Takimoto, T., Shimoda, H., Wako, D. and Matsuzawa, T.:Verificaion of the Simple Calculation Method of Resistance in Floe Ice by the Field Measurement in the Sea of Okhotsk, Proc. 29th Int. Symp. on Okhotsk Sea and Sea Icee, pp.87-91, 2014.
  3. Sogihara, N., Matsuzawa, T. and Uto, S.:Development of "VESTA" ーNavigation Performance Simulator in Ice-free Watersー and its Application to Arctic Navigation, Proc. 29th Int. Symp. on Okhotsk Sea and Sea Icee, pp.87-91, 2014.
  4. 松沢 孝俊, 枌原 直人, 辻本 勝, 宇都 正太郎:北極海航路運航シミュレータの開発-流氷中抵抗増加モデルの拡張及び試計算-, 日本船舶海洋工学会講演会論文集, 第18号, pp.455-458, 2014.
  5. Matsuzawa, T., Sogihara, N., Tsujimoto, M. and Uto, S.: NSR Transit Simulations by Vessel Performance Simulator "VESTA" Part 1 Speed Reduction and Fuel Consumption in the Summer Transit along NSR, Proc. 23rd Int. Conf. on Port and Ocean Engineering under Arctic Conditions, 2015.
  6. Uto,S., Shimoda, H., Wako, D. and Matsuzawa, T.: NSR Transit Simulations by Vessel Performance Simulator "VESTA" Part 2 Simple Resistance Formula of Ships in Floe Ice, Proc. 23rd Int. Conf. on Port and Ocean Engineering under Arctic Conditions, 2015.