RESEARCH OVERVIEW
(2002年6月海上技術安全研究所研究発表会より)
操縦・制御研究グループ | 上野道雄, 二村 正 |
はじめに
波と風、潮流の影響下における航行不能船舶の漂流状態の解析によって、定常釣合状態としての漂流状態が複数存在し、漂流方向および漂流速度が広範囲に広がる可能性があること等を示します。
運動方程式と対象船型
波と風、潮流を考慮した定常漂流状態は次式の定常釣合方程式で表されます。解析の対象としたのは、これまでに水槽実験結果および風洞実験結果、理論計算結果を報告してきた練習船です。練習船の主要寸法等を表-1に示します。
表-1 練習船主要寸法
解析結果
風波中における釣合方程式の解を表-2と図-1に示します。解は5つ得られています。風の方向とは約90度ずれた方向に漂流する①のような解が得られていることは、単に風下や波下の方向に漂流するとは限らない可能性があることを示しています。
表-2 風波中の定常漂流状態を表す解
図-1 風波中の定常漂流状態
風および潮流中における釣合方程式の解を表-3と図-2に示します。解は4つ得られています。この外乱状態は実際の漂流事例の気象海象データから求めたものです。潮流を横切る形で漂流する②あるいは③の解や潮流速度を超える漂流速度を示す④の解は、実際に漂流した船の状態と類似の特徴を示しています。また、①はほぼ風上側に漂流する解を表しており、複数の外乱要因がある中での微妙な釣合状態が存在する可能性を示しています。
表-3 風・潮流中の定常漂流状態を表す解
図-2 風・潮流中の定常漂流状態
おわりに
波と風、潮流下における定常漂流状態を解析しました。外乱の非対称性による解の非対称性および複数解の存在性が複合外乱下において確認されました。ただし、得られた解が物理的に安定な状態かどうかは別途解析する必要があります。