天然ガス生産システム等における洋上出荷オペレーションの安全性・稼働性評価に関する研究

Research Overview

研究概要

 近年、天然ガスはエネルギーの安定供給や地球環境保全を満たす石油代替資源として、利用拡大が期待されており、浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(Floating LNG、以下FLNG)等の実現に向けた検討が各国で進められています。既にPetronas社やRoyal Dutch Shell社によりFLNG実機の稼働が始まっていますが、引き続き開発推進を支援するための技術開発が急務となります。FLNGからLNG運搬船へのLNG(液化天然ガス)移送を考えると洋上でのオペレーションが必須となりますが、我が国におけるエネルギーの安定供給の面から考えると、今後は洋上における船舶間LNG移送に対するニーズが高まり、それに対する安全性や稼働性評価のための技術開発が重要になると考えられます。
 海洋システム研究グループでは、洋上LNG移送オペレーションに寄与できる安全性および稼働性評価システムとして、FLNGとLNG運搬船、2船を繋ぐ係船索やフェンダー、海底とFLNGを繋ぐ係留システム、天然ガスを生産するライザー等を含めた一体挙動解析が可能な数値シミュレーションモデルの開発を進めています。また、それに関連する要素技術として、遮蔽影響を考慮した環境外力の推定法やFLNGとLNG運搬船に搭載されるLNG貯蔵タンク内の液体の挙動(スロッシング)が、2船の動揺に及ぼす影響、LNG移送ホースの挙動評価に関する研究等に取り組んでいます。

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図1 Side–by–Side方式による洋上出荷オペレーションの数値シミュレーション


模型試験(JSPS科研費JP25289327)

 LNGの出荷時に横付け係船(Side–by–Side係船)されたFLNGとLNG運搬船に対する安全性評価では、2船体の動揺評価が必要となりますが、特にFLNGやLNG運搬船のような大型の船が近接する場合は、船体に作用する流体力の相互干渉影響を考慮する必要があります。また、両船が大きなLNG貯蔵タンクを有するため、タンク内におけるスロッシング影響を考慮することにより、2船体の動揺特性がスロッシングを考慮しない場合に比べて大きく異なることが考えられます。2船は係留索とフェンダーを介して接続されているため、その非線形な特性に加えて、2船のスロッシング影響を考慮することで船体に作用する流体力も変化する複雑な問題となります。
 海洋システム研究グループでは、半載状態のFLNGとLNG運搬船の縮尺模型(1/90スケール)を用いた2船体での拘束曳航試験や波浪中動揺計測試験を実施し、船体に作用する流体力やスロッシングが2船の動揺応答に及ぼす影響を調べました。2船のタンク内のスロッシングを考慮した場合としない場合(タンク内の水の挙動を抑制するためにゲル化させた場合)で、低周波側で応答に大きな差が生じています。この応答の差が洋上LNG移送の稼働率に及ぼす影響が今後の検討課題となります。

図2 2船体拘束曳航試験の様子(左)とLNG運搬船に作用する横力の計測例(右)

2船体波浪中動揺計測試験での設営

図3 2船体波浪中動揺計測試験での設営

図4 搭載タンク(右:FLNG、左:LNG運搬船)
※ 水槽試験では、各タンクに水を半分ずつ入れて、食紅で着色した

タンク内遊動水を考慮した2船体波浪中動揺計測試験の様子

図5 タンク内遊動水を考慮した2船体波浪中動揺計測試験の様子

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図6 LNG船の重心まわりにおける横揺れ(Roll)の応答関数


発表文献

湯川和浩、藤原敏文、齊藤昌勝、佐藤宏、大坪和久、石田圭、渡邊充史、長谷川賢太:洋上天然ガス生産システム等の総合安全性評価技術に関する研究、海上技術安全研究所報告、第17巻、第2号、pp.29-51、2017.
 https://www.nmri.go.jp/service/repository_data/PNM21170203-00.pdf


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