MIT産学連携新領域創造プログラム

MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY

世界の魁(さきがけ)となれるチャンスをつかめ


MIT校舎

海技研は、東京大学の「MIT産学連携新領域創成プログラム」に参加しています。
本プログラムでは、複雑な企業や社会のシステムが抱える問題の解決策を産業界の若手技術者・研究者と協働して検討することを目的としたものです。
そのために参加者はシステムアーキテクチャー (SA)、システムエンジニアリング (SE)、プロジェクトマネジメント (PM)に関する技術を習得した後、所属する組織を取り巻く課題の解決に取り組むこととなっています。平成28年度は、日本郵船、NK、JMU、NMRI(出張者)の4社が本プログラムに参加しました。
本プログラムは、参加者が東大での特設講義・演習を受講した後、MITの社会人向け修士課程であるSDMコース(MIT System Design and Management)に参画し、約3ヶ月間にわたりMITに滞在して様々な国籍の学生と共に短期研究を行うことを特徴としています。


2017年度研修に参加して

2017MIT滞在プロジェクト参加者と白石

2017MIT滞在プロジェクト参加者と白石(右端)

MIT校舎
研究イメージ

本プログラムは、今回2017年度が初年度であったため手探りで進むことが多く、参加していて不安になることが多々ありましたが、何とか意思決定支援プラットフォームの開発という成果を挙げることができ、自信になりました。
また、他機関の技術者・研究者と協力してプラットフォームを創り出し、その過程で新しい知識や技術を取得し、さらに今後の海事産業のビジョンについて議論でき、今回のMIT滞在は非常に有意義な機会だったと感じています。本プロジェクトの参加者とは今後も定期的に意見交換を行い、新しいプロジェクト等について検討及び提案を行っていく予定です。

流体制御研究グループ 白石耕一郎

出張先:米国Massachusetts Institute of Technology (MIT)
コース:System Design and Management(SDM)コース
研修場所:Cambridge, Massachusetts, USA
参加期間:2017年3月4日~5月19日


<実施内容詳細>
出張者は日本メンバーとの共同プロジェクトである「海事産業における意思決定支援ためのプラットフォーム開発」に参加しました。プラットフォームという言葉は、IT分野をはじめ多くの分野で使われている言葉ですが、本プロジェクトではシステム・アプローチ手法を用いた新しい意思決定に関する方法論を意味しています。本プラットフォームを用いることで、様々な指標(利益、環境、持続性等)の将来予測に基づいて、新製品開発や新サービスの提供に関する意思決定が可能です。従来の意思決定支援の方法と異なる点は、意思決定者の知識や経験に基づいて意思決定を行うのでは無く、システム・アプローチに基いて開発したシミュレータを用いて、意思決定を行うという点が特徴です。具体的には、次のような流れで意思決定を行います。

  1. Stakeholder Analysis等を用いて対象となる問題で重要となるStakeholderや複数のStakeholderの関係を明らかにします。また、問題において取り得ることが可能な選択肢(新サービスや新製品等)の抽出を行います。次にシミュレータを製作するために対象となる問題のモデル化を行います。モデル化の方法は複数ありますが、問題全体の流れを整理する方法としてObject Process Method(OPM)は有効な方法のひとつです。
  2. 複数のStakeholderにおける利益、安全、環境などの複数の指標(lifecycle properties)を評価可能なシミュレータをモデルに基づいて開発します。シミュレータは可視化機能及びインタラクティブな操作機能を有しており、複数の参加者で操作しながら利用することも可能です。
  3. 上記2のシミュレータの結果からTradespace analysisを行い、問題解決に適切な選択肢の評価を行います。複数のStakeholderにおける指標に基づいた評価を行うことができるのも特徴としています。
    今回の滞在では、本プラットフォームのプロトタイプの開発を行い、今後の船舶燃料(低硫黄燃料、LNG燃料等)についてケーススタディを行いました。その結果、LNG燃料を普及させるためには、港湾オペレータとの連携が重要であり、連携することによってLNG燃料の価格弾力性を高めることができることを確認しました。

今後の展望

本プロジェクトは現在も継続しており、今年度開発したプラットフォームのブラッシュアップ及びケーススタディの高度化を図っています。また、今後は海事産業以外の企業の参加も予定されており、複数の産業に跨がる横断的なプロジェクトとなると考えられます。